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2018年6月12日火曜日

身体の区分

 今回は身体の捉え方のまとめ。身体全体の区分について。

 これまでは指の使い方や打鍵の仕方について等、身体の細部にわたって詳細に検討してきました。

最終回の今回は、大きな枠組みとして身体を捉え、そこから各部分への検討を行いたいと思います。


▼指先・頭頂・足の先

 身体を大きく捉えるためには、身体の各先端を意識に上げることが効果的です。そうすることによって、意識的に捉えられる空間が飛躍的に広がることを感じられます。

 大きな空間を感じるために、指先・頭頂・足の先を意識します。更にこの先端が空間に伸びていく事をイメージしましょう。



▼手と前腕。そして胴体

 身体を意識的に捉えるために、それを構成している"区分"について認識を持ちましょう。これはつまり"手""前腕"、そして"胴体"です。この時の胴体とは肘より後ろの事を指します。
 

手=指・手の甲・手首

 手は、"指"と"手の甲"・"手首"から構成されています。

・既に検討した通り、指は基節骨から始まり、指の動きは基節骨の内側(底)から始まることを認識しましょう。

・手の甲は中手骨の部分にあたり、指の動きを補助する役割があります。ここをしっかりと指の動きに適合させてあげることが、上達のカギです。 

・手首は中手骨の動きに伴います。
 この時に、手首を"使う"のではなく、"手首の動きに伴うもの"として考えます。


▼手首や腕・肩甲骨は"使わない"、その代わりに"緩める"or"開く"

 一般的に指導をされる際、「腕や手首を自由に使って」「背中から意識して」等の言葉を用いられるかと思います。しかしこの言葉には語弊が含まれていると思います。

 先述した通り、手首から後ろは手の動きに"伴うもの"であって、主体的に"使うもの"ではないのです。あえて付け加えるなら、手首を上下に軽く振る動きが打鍵を助けてくれることもあります。しかし基本的には指の動きと、その動きを補助する中手骨の動きに伴うものだと考えます。

 演奏をする際に多くの身体エネルギーが必要な場合があります。
 この時には、腕や肩甲骨を緩める意識or開いてあげる意識を持つだけで、そこ部分から十分な身体エネルギーが生まれてくることを感じることが出来ます。

 しかし、生まれてきた身体エネルギーも、指先のコントロールが伴わない事には、良い演奏エネルギーに替えることはできません。
 演奏をする際にはまず、指で十分に鍵盤をコントロールすることに重きを置きましょう。 
 
まとめ 

 演奏は"指"で鍵盤をコントロールすることから始め、そこに中手骨を合わせてあげる。手首はその動きに伴い、その延長として前腕も手首に動きに沿う。肘から後ろは使わない、その代わりに緩めるor開けてあげることを意識する。そうすることによって、演奏に必要十分な身体エネルギーが生まれてきます。


 以上で身体の使い方についての簡潔な考察を終えます。
 感覚的なものを文章に落とし込んだので、意図が伝わりにくい箇所もあるかと思いますが、折を見て文章なども改善していこうと思います。

 次回からは"楽譜の読み方の原則"について記していきます。

2018年3月23日金曜日

手のひら・親指・手首について

 前回までは"指"について詳しく検証してきました。
 今回はその指につながる場所である"中手骨"から見ていこうと思います。

▼鍵盤を狙う

 中手骨は"指"と"手首"の間に位置しています。
 ピアノを弾く際の主な役割は、指が鍵盤の上に来るように鍵盤を捕まえに行く役割です。中手骨で打鍵を狙い、指ではなく中手骨で鍵盤を捕まえる意識を持つと、手のひらに付いている筋肉の余計な緊張なしに、スムーズに指が活躍する準備ができます。



▽中手骨の場所は手のひらの場所と重なります。場合によっては、この手のひらの重さを鍵盤に伝えることもあります。

 中手骨の底から動かし、中手骨の頭に向けて重さを振ります。重さの振り方は、その時に求める音の質や音の大きさによって変化します。

 音の質・音の大きさは鍵盤を動かす速さで決まります。鍵盤を動かすと、ピアノの中の装置が動き、ハンマーにエネルギーを伝え、弦を打ちます。この鍵盤メカニック装置全体にも重さがある為に、手からの重さをどのように鍵盤に伝えるかも等しく、打鍵の速さに関係してきます。



▼親指は鍵盤に対してやや垂直に

 親指には中節骨が存在しないため、末節骨と基節骨の動きで鍵盤をコントロールします。打鍵は親指のやや側面で、鍵盤に対して垂直に行います。
 特に、早いパッセージの場合は、親指の中手骨が鍵盤の前にある事を意識します。
 

▼手首は指と手のひらの働きを邪魔しないよう

 手首に役割はありません。
 あえて言うならば、普通の場合は手首をゆったりと伸ばし、指と手のひらの活動を邪魔しないように、その動きに委ねるのが良いでしょう。そうすれば自然と、いわゆる"手首が使えている状態"になります。


まとめ

・中手骨で鍵盤を狙う
・手のひらの重さを振る
・親指は垂直に触れる 
・手首はこの動きに伴う


次回は身体の区分・まとめ

2018年3月5日月曜日

"指"の動き

 今回は指の働き方について

▽この項を書くにあたっては苦心を重ねました。と言うのも、この項を書くために自分なりの再検証を試みている中で、次々に新しい気付きが得られました為です。すると自分の中での表現が次々と新しい言葉の書き換わっていきました。

 そんな中で、一つのまとめとして、ある程度確定的な部分を記そうと思います。

▼指の動きの起こる場所

 基本的な"指"の動きは、基節骨のから起こります
 そして指の動きが起こる場所は手のひら側(内側)にあり、基節骨の底を起点として、指の動きは中手骨と区別されます。



▼中節骨

 基節骨と末節骨の真ん中に中節骨が存在します。(基になる骨があり、末に骨があり、その中間に骨がある)
 鍵盤のコントロールは、この三つの関節の底をよく意識して、打鍵の力が手の内側に向かう事を感じながら弾くとよいでしょう。
 
 
▼連動する指

 指の動きは、指先の動きに伴います。三つの関節は連動して、打鍵の強さや音色作りを担います。
 厚みのある音色を求める時ほど、基節から動かす意識が必要となり、パッセージが細かくなるにつれて末節の動きへと移行していきます。

▼身体からのエネルギーを受け止める

 基節骨は、身体からのエネルギーを受け止めて支える"要の場所"でもあります。この時も、エネルギーを受け取るのは常に手のひら側(内側)であり、エネルギーが手の外側に逃げないように注意しましょう


まとめ
・指の動きは底から起こる。
・動きはいつも内側に向かう。
・末節・中節・基節骨の底が連動して鍵盤をコントロールする。


次回は親指・手のひら・手首について

2018年2月26日月曜日

"指先"の動かしかたについて

 今回は、ピアノ演奏をグッと上達させる指先の動かしかし方について

▼タッチは指先から作る

 僕が目にした多くの教則本には「肩は背中の肩甲骨から.....」と書いてありました。それはその通りなのですが、僕からしてみると「それでどうすれば?」と言うような状態でした。
 たとえ肩甲骨からエネルギーが発生しても、音を作り決定するのは指先です。指先で鍵盤をコントロールする感覚をつかみ、表現によって手首・肘・肩・腰とエネルギーを足していく方法が良いでしょう。
(実際多くの場合、全ての部位のエネルギーをMixして用います)

▼指先のタッチ

 指先のコントロールを感じるためには、最小のタッチがどこから生まれるのかを知る必要があります。タッチは指先から作るので、指先で作るタッチが最小です。この最小のタッチを"指先のタッチ"とします。

 肝心なのは、この指先のタッチがどこから始まるのかと言うことです。

 この動きは指の末節骨の根元から始まり、ここを動きの始まる起点とします。
また、この起点は必ず指の内側にあります。
 末節骨の根元から指先を動かす感覚と、鍵盤を捉える感覚、そして末節骨の根元を鍵盤の底に落とすような感覚を、練習で掴みましょう。




▼足先の意識もあげる

 指先だけに集中しようとすると、一点に集中し過ぎて体が強ばってしまうことがあります。肩凝りの原因でもあり、音に対する感度を鈍らせる原因でもあります。
 それを和らげるためにも、指先と同時に、もう片方の先端である足先を意識に上げることによって、より高次元の感覚を得ることができます。

まとめ
・指先タッチは末節骨から
・鍵盤を捉える感覚を養う
・足先も意識にあげる


⇒次回は"指"の動かし方について

2018年2月19日月曜日

座ること

 今回はそのまま。座ることについて。
 ピアノを弾かれない方も、普段の生活の中で役立てることが出来るので是非実践してみてください。

▼理想の姿勢

 理想の姿勢とは、いったいどのような姿勢でしょう。一般的に想像されるのは、背筋をピンっとのばしている状態を思い浮かべられるかも知れませんが、実はそれは理想の姿勢ではありません。
 最も理想的な姿勢では、全身の筋肉は無理なく緩み、それにも関わらず全身のバランスは保たれています。

 それを実現するのは簡単で、頭の上に風船がついているのをイメージすることによって、全身のバランスが整えられます。
 
▼足・腰・頭を常に意識にあげる

 更に、身体の両端である、そしてこの中間に位置するを意識に上げましょう。ここで言う腰とは仙骨の事です。

 頭のテッペンから、背骨の真ん中を通り、足の真ん中へ。
 三点から成るあなたの軸が身体を貫いていることを感じましょう。
 頭に風船がついているイメージも忘れないでくださいね。

 他の方法として、座禅をくむ姿勢をとってみましょう。お尻の下に太めの座布団を入れると、座りやすくなります。

 目を瞑り、左右にゆっくりと身体を揺らしてみます。あなたの身体の中心を感じてみましょう。次に身体を前後にゆっくり揺らして、あなたの中心を感じてください。
 ここで感じるあなたの中心は、目で見た時に真っすぐでなくても構いません。
 
 一人一人の身体は歪んでいるので、その中であなた中心を見つけることが大切です。
 この時も、頭の上にある風船はイメージしてくださいね。 

 あなたの中心を見つけることによって、全身の筋肉の緩みを知ることが可能となり、筋肉の状態を知ることが出来ます。 

▽ピアノを弾くときは手・足・腰を意識する

 前回ピアノを弾く際の体勢として、手・足・腰の三点を意識すると、捉えられる空間の範囲が広がると記しました。この三点に頭を加えることによって、より意識的な演奏が可能になりますが、頭については、始めのうちは徐々に意識していけばよいと思います。 
 
▼ピアノ椅子の高さはどれくらい?

 椅子の高さは、各個人の体型に合わせて決めるものですが、ここにも基準があります。

①まずは左手で握りこぶしを作ってください。
②そのこぶしを、小指側を下にして鍵盤の上に乗せてみましょう。
③こぶしを鍵盤に乗せた際に、肘が鍵盤より上にある状態にします。
④鍵盤に対して、こぶしが水平か、それより高くある状態が理想的です。
⑤こぶしは鍵盤に置きっぱなし。その状態で鍵盤の下にスッと重さが落ちる感覚があればベストです。

 このように椅子を設定されると、その高さに驚かれるかもしれません。しかしこの高さには理由があります。

①前腕を持ち上げる筋肉を使わない
②肘がゆるやかに曲がるので、腱への影響が少ない
③結果、指先から足までの連結が易くなる
④音を聴く耳の位置が上がり、よく音が聞こえるようになる。
⑤つまり、うまくなる

まとめ
・頭・腰・足の三点を意識に上げ、頭の上に風船についていることをイメージする。
・身体の中心を感じる事によって、筋肉の緩みを感じることが出来る。
・椅子の高さは、肘が鍵盤より下にならないように。


⇒次回は指先の動かし方について

2018年2月16日金曜日

身体の捉え方 ~ 一つの身体として機能するためのポイント ~

 今回は、ピアノに向かう際の演奏者の"体勢"について。
 大まかにポイントを押さえて記そうと思います。

【大きな三つのバランス 足・腰・手】

▼僕たちの持っている身体は非常に高性能です。
 例えば平均体重で言えば男性は66kg・女性53kgですが、この重さをものともせずに、僕たちは走り回ったり飛び回ったりできます。これは、僕たちが本来持っている身体のバランス調整機能が如何に素晴らしいかを物語っていると思います。。。思いません??

 例えば10kgの荷物でも運ぼうとすれば、それはそれなりに重さを感じて、あなたの自由は阻害されるでしょう。しかし、あなたが10kgほど太ってしまった場合、以前より身軽な動きではないでしょうが、あなたは自由の動き回ることが出来ることは、容易に想像できます。
 動物には本来的にこのバランス機能を備えており、ピアノの演奏にこの機能を活かさない手はないでしょう。

【腰は身体の要・重心】

 どのスポーツにおいても、身体の"重心"を捉える事は、その道で上達をするには欠かせない事です。野球・サッカー・柔道・相撲・レスリングetc.....どスポーツでも、重心をいかに捉え動かすかは、勝負の分かれ目になります。
(野球の投手なら、ピッチング時の重心移動。サッカーでは一対一での勝負の際。柔道はいかに相手の体勢と崩すか。。。)
 最も重要なのは"腰"の使い方です。身体を全体的に見た際に、腰が身体の中心に来ています。ここに重心を感じているか否かで、運動性能は大きく変化してきます。

  "腰"と言う漢字は、身体を示す"月"(ニクヅキ)に"要"と書きます。
 名は体を表すと言いますが、諺とは、いつもその核心を突いていますね。

 この腰の重要性は、ピアノ演奏に於いても例外ではありません。

 "腰の重心"が定まっているか否かは、あなたの身体が自由になり、あなたの演奏が自由になるための必須条件です。


 腰の重心は、演奏時に身体の支点となります。
 そして一方で、腰が重心になるという事は、重心を作っている他の点があるという事です。
 その重心を作っている他の点が"足""手"です。演奏者がピアノの前に座っている際には、足と手の中間地点腰の重心が存在していることを、十分に意識しましょう。
すると、あなたの演奏時に捉えられる空間の範囲が格段に広がることが感じられるでしょう。

 ここで一つ気を付けて欲しいのが、"腰"の位置についてです。おそらくみなさんが思う腰は、おへその周りの事を想像されているのではないでしょうか。
 実は、僕が感じて欲しい腰の位置はそこではなくて、もう少しだけ下で奥の場所。背骨の一番下にある仙骨の部分です。そこを体の中心・支点として捉えると、あなたの上体は軽くなり、自由になるための土台となります。





まとめ
・自由になるためには、身体の重心を感じることが大切。
・支点となる場所は、背骨の先端にある仙骨。
・手・足・腰の三点を感じて重心を感じると、演奏時に捉えられる空間が広がる。

 今回はここまで。次回は"座ること"についてついて記します。

2016年3月30日水曜日

能動的演奏考 下 ~普段の練習ですること~ 

 前回までは、本番やその当日の事についてを主に記してきました。
 今回は、毎日の練習でするべき事について記します。

 【音楽を奏でるために】

 最初にやはり強調しなくてはいけない事は、練習のどの段階にあっても、その音やフレーズの持つ意味・前後関係を考え、音楽を考えながら練習をしなくてはいけないと云う事です。当たり前の事ですが、しかし当たり前の事は常に大切です。それを踏まえたうえで、普段の練習で何をすべきかを記していこうと思います。

 【楽譜から情報を適切に読み取る】

▼楽曲に取り掛かる最初の作業は譜読みですね。しかしこの譜読みの段階が、音楽を創るために最も大切な段階です。それは、楽譜の中にはすべての事が書かれてあり、また"隠れている"ためです。その一つも見落とさないように、自分の気持ちとは距離を置いて分析をすることも、時には必要です。

 例えば、楽曲には"楽節"という大きな塊があり、前楽節と後楽節によって一つの楽節が成り立っています。その楽節の中にはいくつもの"ニュアンス"があり、それは作曲者によってスタカート、或いはレガートやアクセントといった形で指示が為されています。それらを支えているのは"和声"であり、和声には緊張と緩和があります。また拍子にも強弱があり、これは例外なく、その楽曲の曲想に大きな影響を与えています。和声感や立体感を出すにはアーティキュレーションを…等々。これらのすべてを楽譜から抽出し、そして最適化させる作業が譜読みです。

 譜読みと同時に、その曲のキャラクターも捉えていく必要があります。
 キャラクターは、テンポ表示(Allegro...Alegretto...Adagio...)や調性に関係しており、またリズム感ともよく密接に関係しています。分析を行い、読み取った情報にキャラクターを持たせていけば、その曲の持つ個性や意味が音楽となって現れてくることでしょう。それだけ、楽曲の分析は大切な段階であり、必要不可欠な作業です。

 実は、多くの技術的な問題は、音楽的な問題の中に集約されています。
 なぜなら音楽は緊張と緩和の連続であり、小さなフレーズの中にさえこの緊張と緩和は隠れています。これを読み違えてしまうと、楽譜と演奏に矛盾が生じて、意味の通じない演奏になってしまいます。しかし、楽譜を適切に読み取れば、多くの技術的な問題は解決されます。
 
 上記のような分析を行い、そしてそれに基づいて自分の音楽を確立していく練習が、普段の大半の練習です。このような練習を続ければ、"意味"と"確信"をもって演奏することが出来ます。そして遂にはには自己と音楽とが一体になることが出来ます。

 本番が近づくにつれ、舞台上で音楽を奏でることを想定した練習が必要です。これは、舞台上で音楽を奏でるための精神的な準備です。舞台に上がった自らを想定して、やりたい音楽に執心する。僕が思うに、練習からいきなり舞台に上がって音楽を奏でる事だけに集中できるほど、人間は割り切れるものではないと思います。
 

(※22/5/2016に追記)
▽緊張は、心と体の準備のようなものです。なんのための準備か、それは勿論、音楽を奏でるためですね。
 加えて最近僕が思うのは、舞台上での自分自身の演奏に感動するという事です。
 自分が感動していないもので、一体聴衆が感動してくれるでしょうか。また例え聴衆が感動されたとしても、自分が納得していなければ不満ではないでしょうか。
 舞台上で自分の演奏に感動する。そのための準備の一つが緊張なのだと思います。


 この段階を経て本番を迎えれば、舞台上で自己と音楽が一体になる演奏が実現し、音楽を奏でる事に集中できると確信しています。


 これまで上・中・下と、舞台で音楽を奏で るために必要な準備について記してきました。しかしここに記したことは、あくまで音楽を、最も抽象化した捉え方にすぎません。
 譜読みの仕方や体の使い方等については、別の記事でもっと踏み込んで記したいと思います。 


2016年3月26日土曜日

能動的演奏考 中 ~本番直前にすること~ 

 前回は、普段の練習におけるイメージと、舞台上での心構えについてを記しました。
 舞台上では【やりたい音楽を自由にやる】として、それによって本番での不安は解消されるとしました。
 今回は、本番に入る為のルーティーンについてを記します。

 【本番前の準備】

 本番直前に舞台上のピアノを触れる場合は、まず鍵盤の感触や跳ね返りを確かめ、ハンマーの挙動を確認し、そしてホールの一番後ろの席を意識した響きをなんとなく感じます。ここで、その日弾く曲の響きのイメージを作ります。

 別室で練習できる場合も多々ありますが、この時には譜面を置いて、やりたい音楽の確認をするのがよいでしょう。
 僕は、本番まで一時間前を切れば、ピアノに触れないようにしています。ピアノに触っていると、その日の本番に対するパワーが抜け出て行ってしまうと感じるためです。

 本番前は緊張します。沢山の演奏者を見てきましたが、ほぼ例外なく、すべての人が特別な状態にあります。そして例えば、その緊張によって体が強張ってしまうと、湧き出てくる音楽を筋肉がブロックしてしまう場合があります。

 したがって本番前は"軽いストレッチ"で体の強張りをほぐしましょう。
 僕が行うようにしているのは、腕を前へグゥッと数秒伸ばし、そして筋肉が緩んでいくのを感じるストレッチと、脇の下の強張りをほぐす軽いマッサージです。そして、鎖骨の間にある頚窩(ケイカ)という部分を開くイメージを持ちます。こうすると呼吸が少し楽になって前向きな気持ちになるんです。

 もう一つは、椅子の上に正しく座って、脚を地面から離し、お腹に力を入れて支える、体幹トレーニングを行います。お腹に力を入れることによって、呼吸を楽にする事もできますし、それに伴って上体の緊張が解けるのを感じる事ができます。

 そして譜面を読み直しながら、自分の頭の中で理想の音楽をイメージします。
 本番は、本番の瞬間のみに非ずして、舞台に上がる前から既に本番であると思いましょう。譜面を読みながら理想の音楽をイメージすることも、本番の一部なのです。

 舞台に上がった時のお辞儀の仕方も考えておきましょう。いつものやり方があれば、それが本番に入る一つの良いルーティーンとなります。
 椅子の高さは非常に大切なので、一切の妥協なく設定するべきです。

 さて、演奏にとりかかるまでは一応これで完了です。湧き出る力を感じながら演奏に入りましょう。

 演奏の始まり・始めは、鍵盤を押し下げる感触をよく感じ、また、ハンマーと弦との関係を感じるのがよいと思います。指先の感触は心に安心感を与えてくれ、勇気を与えてくれます。普段から出したい音を明確にイメージしたうえで練習をしていれば、演奏開始後、それとほぼ同時に、もしくは少しずつでも、演奏に自然と溶け込み音楽を奏でる状態に入っています。

 それでは具体的に、普段の練習では何をするべきなのか。
 もう何度も記しましたが「やりたい音楽」を引き出す事が、普段の練習ですべき一番重要な事柄です。
 次回は、練習の段階で為すべきことについて記します。

2016年3月24日木曜日

能動的演奏考 上 ~本番に舞台上ですること~ 

 『いったいみんなは、どんなことを考えながら練習をしているんだろう』

 これって大学生時代に、何も分からなかった僕が一番知りたかった事なんです。だけれど残念ながら、長らく、自分の納得のいく答えは見付けられなかった。そして実は、そんな事を疑問に思っている人って結構いるのではないでしょうか。
 したがって今回からは数回にわたって、僕が音楽を創っていくにあたって何に留意しているか。そんな事を記していこうと思います。


 【本番のはなし・舞台上でする事】

 それでいて「なぜいきなり本番の話になるんだろう」と思われるかもしれません。まずは、どういう練習をしているのか。それを記すのではないのかと。

 しかし実は、そこが一番の盲点なのだと考えています。なぜかと言えば、本番で演奏するために奏者は練習するからです。当たり前の事だと思えるかもしれませんが、これが一番重要な事だと僕は考えています。
 つまりは、本番にどのような音楽をするのかを常に想像して練習しなくてはいけない。その理想に向けて練習しなければ、いつまで経っても"練習の段階"を抜け出せない。はじめにやりたい音楽があって、それを実現するために普段の練習をするべきなんですよね。

 一つのイメージとして、積み木のように練習を重ねたうえに音楽があると言うよりも、やりたい音楽のイメージに吸い上げられるように練習する方が良いのだと思います。そうしないと、出来ないことを繰り返すだけの練習になってしまいがちではないでしょうか。
  

▼さて、僕も昔は、本番前にどうしていいか分からずに、本当に子猫のように怯えていた時期がありました。いろいろな心配、特に暗譜についての心配が襲ってきて、本番前夜などは、頭の中で曲を繰り返しては暗譜が分からなくなったり、楽譜を何回も見直しちゃったり。本番直前も目の前が真っ暗になるような経験を、何度もしました。
 でもじゃあ、なんでそんなに怖いのかが長年分からなかった。失敗が怖い、暗譜が飛ぶのが怖い、暴走が怖い、滅茶苦茶になるのが怖い。色々と怖いことは分かっているけれど、では何故?と言えば、これが分からなかった。
  『分からない』という事は、不安の要素の一つです。逆に、ではどうするかが分かれば怖さも軽減されます。

 この疑問に対する一つの答えとして、ある時に『自分は舞台上で何をするべきかが分かっていないんだ』と言う結論へ至りました。僕にはこれこそが、日々の生活から練習に至るまでに、演奏者が理解すべき最大の事柄のように思えます。

 では舞台上ですべきことは何か。
 それは【やりたい音楽を自由に奏でること】です。
 当たり前の話のようです。しかし、当たり前のことが常に最も大切なのです。

 舞台の上で僕たちは"なにがしたい"のか。やはり一番は"自分の最高の演奏をしたい"に違いありません。


 自分の記憶力を披露する場所や、勝利を勝ち取る場所では決してありません。失敗を恐れたり、気負って興奮してしまったり。これらはすべて自分の奏でたい最高の音楽を忘れてしまった結果ではないでしょうか。

 したがって、舞台では誠心誠意を尽くして良い音楽を奏でる場所だという事を、演奏者は、血肉になるように意識する必要があります。

 でも、それがしたくても出来なく困ってるんじゃん!!じゃあどうする!?
 次回は本番のルーティーンについて。