2016年3月24日木曜日

能動的演奏考 上 ~本番に舞台上ですること~ 

 『いったいみんなは、どんなことを考えながら練習をしているんだろう』

 これって大学生時代に、何も分からなかった僕が一番知りたかった事なんです。だけれど残念ながら、長らく、自分の納得のいく答えは見付けられなかった。そして実は、そんな事を疑問に思っている人って結構いるのではないでしょうか。
 したがって今回からは数回にわたって、僕が音楽を創っていくにあたって何に留意しているか。そんな事を記していこうと思います。


 【本番のはなし・舞台上でする事】

 それでいて「なぜいきなり本番の話になるんだろう」と思われるかもしれません。まずは、どういう練習をしているのか。それを記すのではないのかと。

 しかし実は、そこが一番の盲点なのだと考えています。なぜかと言えば、本番で演奏するために奏者は練習するからです。当たり前の事だと思えるかもしれませんが、これが一番重要な事だと僕は考えています。
 つまりは、本番にどのような音楽をするのかを常に想像して練習しなくてはいけない。その理想に向けて練習しなければ、いつまで経っても"練習の段階"を抜け出せない。はじめにやりたい音楽があって、それを実現するために普段の練習をするべきなんですよね。

 一つのイメージとして、積み木のように練習を重ねたうえに音楽があると言うよりも、やりたい音楽のイメージに吸い上げられるように練習する方が良いのだと思います。そうしないと、出来ないことを繰り返すだけの練習になってしまいがちではないでしょうか。
  

▼さて、僕も昔は、本番前にどうしていいか分からずに、本当に子猫のように怯えていた時期がありました。いろいろな心配、特に暗譜についての心配が襲ってきて、本番前夜などは、頭の中で曲を繰り返しては暗譜が分からなくなったり、楽譜を何回も見直しちゃったり。本番直前も目の前が真っ暗になるような経験を、何度もしました。
 でもじゃあ、なんでそんなに怖いのかが長年分からなかった。失敗が怖い、暗譜が飛ぶのが怖い、暴走が怖い、滅茶苦茶になるのが怖い。色々と怖いことは分かっているけれど、では何故?と言えば、これが分からなかった。
  『分からない』という事は、不安の要素の一つです。逆に、ではどうするかが分かれば怖さも軽減されます。

 この疑問に対する一つの答えとして、ある時に『自分は舞台上で何をするべきかが分かっていないんだ』と言う結論へ至りました。僕にはこれこそが、日々の生活から練習に至るまでに、演奏者が理解すべき最大の事柄のように思えます。

 では舞台上ですべきことは何か。
 それは【やりたい音楽を自由に奏でること】です。
 当たり前の話のようです。しかし、当たり前のことが常に最も大切なのです。

 舞台の上で僕たちは"なにがしたい"のか。やはり一番は"自分の最高の演奏をしたい"に違いありません。


 自分の記憶力を披露する場所や、勝利を勝ち取る場所では決してありません。失敗を恐れたり、気負って興奮してしまったり。これらはすべて自分の奏でたい最高の音楽を忘れてしまった結果ではないでしょうか。

 したがって、舞台では誠心誠意を尽くして良い音楽を奏でる場所だという事を、演奏者は、血肉になるように意識する必要があります。

 でも、それがしたくても出来なく困ってるんじゃん!!じゃあどうする!?
 次回は本番のルーティーンについて。

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